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2022.12.08

#6 高断熱×冷暖房×パッシブ 住宅性能の考え方

最近、お客様から「Ua値いくつですか?」とか「HEAT20の何グレードですか?」といったことをよく聞かれるようになってきました。
でも実は、断熱性能が高ければ快適というわけではないのです。
断熱性能や気密性能の数値だけ追い求めることが目的になるのは、危険なことです!
性能の数値はあくまで手段であり、目的は「冬暖かくて、夏涼しい家を作ること」です。

 

■建物の温熱環境の3要素ー高断熱について
まず、気密性能が良いのは大前提です。
気密性能が良い=家の隙間が少ないということになります。
 

気密測定

 

その上で、断熱性能の一つの基準についてご紹介します。
断熱性能はUa値で表します。
(数字が小さい方が断熱性能が高いということになります。)
日本ではこの断熱に、区分というものが決められており、石川県は6地域もしくは5地域に該当します。

6地域だとすると、国の基準を満たす性能はUa値0.87W/㎡Kになります。
小数点以下の世界なので、ピンとこないかと思いますが、実はこの数値を0.1下げるということは大変なことで、コストもかかります。
アーツデザインが建てている家はHEAT20のG2グレードなので、Ua値0.46W/㎡K以下という数値になります。
これを標準仕様としています。
 
高気密高断熱の自然素材の家
 

■建物の温熱環境の3要素ー冷暖房について
HEAT20 G2の断熱性能の家しか建てない理由は、その性能があればエアコン一台で全館空調が可能だからです。
高断熱の外皮の性能に、冷暖房を組み合わせることで快適な暮らしができるようになります。
なので、高気密である上で、HEAT20のG2グレードをクリアしているという仕様は、一つの大事な基準だと考えます。
その性能があれば、暖房負荷もひと冬で40kWのエネルギー消費で済むので、30坪の家であればひと冬4万円位の電気代で快適に過ごせます。
壁掛けエアコン1台なので、とても省エネです。

1階のエアコンは暖房用として、2階のエアコンは冷房用として、冬も夏も1台のエアコンで全館空調が可能です。

 

エアコン1台で全館空調

 

この表は断熱性能と消費エネルギーをまとめたものです。
次世代省エネ基準のUa値0.87W/㎡Kをベースにして、
居室の間欠暖房(暖房を人がいる間はつけて、いない時は消す使い方)で使うエネルギー量を基準にしています。

断熱性能と消費エネルギー

Ua値0.87W/㎡Kの家の居室で間欠暖房を使った時の消費エネルギー量と、
HEAT20 G2の家で家中連続煖房をしたときの消費エネルギー量が同じということを表しています。

断熱性能が高くなると省エネになることを示しているのですが、仕様は上げていくにつれ、建築コストが上がっていきます。
次世代省エネ基準の家からG1の家にする時に100万円、G1からG2に上がる時に100万円上がると言われています。
ただ、G2からG3にあげる時はさらに250万円上がると言われているので、初期コストと快適性の費用対効果のバランスも考慮する必要があると考えます。

 
自然素材の家
 

■建物の温熱環境の3要素ーパッシブについて
さらに高断熱の家にパッシブ設計を組み合わせることで、低燃費な暮らしが実現します。
エネルギーをそんなに使わないで快適に過ごせるということです。

パッシブ設計とは、「風通し」「太陽熱のコントロール」を考慮した設計ということになります。
太陽の熱については、冬は南の大きな窓から太陽熱を家に入れて暖房負荷を下げましょう、
夏は軒の出を出して太陽熱をシャットアウトして冷房負荷を下げましょう、と考えます。
 

 
■3つの要素のバランス
 
高断熱×冷暖房×パッシブ
 
高断熱×冷暖房×パッシブ、この3つの要素が重なることで、長期満足が得られる暮らしができると考えています。
 
高断熱×冷暖房×パッシブ2
 
高断熱×冷暖房だけこだわっていくと、
窓をすごく小さくしていく必要があるので、外の景色を楽しめないことになったり・・
 
高断熱×冷暖房×パッシブ
 
高断熱×パッシブだけこだわっていくと、
数値が低ければ低いほどいいということになり、建築コストが跳ね上がってしまいます。

このような理由から、偏ることなく、この3つをバランスよく取り入れていくことがとても大事です。

今、このようなことは、建てる前に計算やシュミレーションで見える化できる時代になりました。
目的である「冬暖かくて、夏涼しい家」で、長く快適に暮らすこと。
住宅性能のバランスにはこだわって、豊かな暮らしを追求していきたいと思います。
 

 

■まとめ
高断熱にすれば、快適で低燃費な家になるわけではありません。
高断熱の建物に、安価な冷暖房設備とパッシブ設計を組み合わせ、
丁寧にシュミレーションすることで、長期的に満足できる暮らしが実現します。
詳しいお話はこちらのYouTubeでも話しているのでぜひご覧ください。

 

 

■ 最後に
このコラムでは、家づくりや建築に関する知識や情報を発信しています。
毎日何か所もの現場を飛び回る現役現場監督の代表荒木が、知っておくべき専門的な建築に関するあれこれを綴ります。
建てる前も住んでからも・・みなさんの豊かな暮らしのお手伝いができると嬉しいです。

 

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最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
YouTubeでは、ルームツアーや家づくりのポイントなどをお話しています。
そちらもよかったらご覧ください。

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