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2023.01.18

#7 予算をどう配分する?家づくりのコストのかけ方

家づくりにおいて、予算には限りがあるので、その予算をどう配分しどこに重点的にかけるべきか・・?
失敗しない家づくり、長持ちする家を実現するための考え方があります。
家は買い替えられるものではないので、
最終的に失敗しないために、建てる時に考慮するという長期的な視点も必要になります。
その考え方を、理想のコストのかけ方のピラミッド図を中心に書いてみようと思います。

 

■理想のコストのかけ方のピラミッド図
 

予算配分のピラミッド図

 
このピラミッド図は、予算の比重を多くしたい項目の割合が大きくなるように作っています。
一番コストをかけるべき所は、一番下のベース部分のライフサイクルコストに関わるところになります。
長期的に計算してトータルのライフサイクルコストが安くなる家を建てる
ということが最重要視するべき部分です。
その次は長期耐久性に関わるところ、最後にデザインに予算をかけて頂くという考え方です。
 

■ライフサイクルコストについて
ライフサイクルコストとはなにかというと、生涯にわたって建物にかかる費用のことです。(LCCと呼びます)
別の言い方をすると、イニシャルコスト+ランニングコストのことになります。
イニシャルコストとは、新築時にかかる費用。
ランニングコストとは、光熱費やメンテナンス費などの住み始めてからかかってくる費用です。
この2つを合わせたものを、ライフサイクルコストと呼んでいます。
 

ライフサイクルコストの安い家

 

ここで大事なことは、イニシャルコストが安い=ランニングコストが安いということは、成り立たないということです。
イニシャルコストをかけることで、「ランニングコストが安い家」が実現できます。

ここではランニングコストの代表になる光熱費とメンテナンスコストについてふれておきます。

①光熱費について
始めに高気密・高断熱・日射遮蔽・日射取得などの項目を考えた上で設計します。
さらに計算ソフトでシュミレーションをかけて、建築前にかかるであろう光熱費を算出します。
最後に、設計図に合わせてきちんと施工することで、光熱費のかからない家を建てることができます。

 

 

②メンテナンスコストについて
メンテナンスコストを抑える1つの方法として、自然素材100%の材料をおすすめしています。
無垢の木や珪藻土などはとても長持ちします。
このような自然素材100%の材料は、イニシャルコストはかかりますが、長い目で見てメンテナンス費を下げることができます。
経年変化を楽しむこともできるので、とても優れた素材と言えます。

 

 

メンテナンスコストについては見落とされることが多い現状がまだあります。
建てる前にこそ、メンテナンスにかかる費用にもぜひ意識を向けてみてください。

「ライフサイクルコストが安い家」ということが予算配分の大きなベースになる理由は、家は買い替えができず長く使うものになるというところにあります。

 
家の予算配分
 

性能が良い家を建てることで光熱費を抑え、毎月の生活費を下げることができます。
また修繕にかかる急な出費や家の維持費に怯えずに安心して暮らせます。
そして、このような積み重ねがいつの間にかイニシャルコスト以上の差を生んでしまうのです。

 

■長期耐久性について
家に長く安全に住むために、予算をかけるべきポイントが大きく3つあります。
①防水(雨漏り)
②防湿(壁体内結露のリスクがあるかないか)
③防蟻(シロアリ対策)
家の耐久性に関わるこの3つの対策が非常に重要です。

 
アーツデザインモデルハウス

 

①防水について
防水に関しては、屋根の形状をシンプルにすること、必要性のないベランダやバルコニーを作らないことで、雨漏りリスクを下げることができます。
ベランダの下に居室を置かないこともポイントです。

②防湿について
防湿というのは、結露を防ぐという意味になります。
窓だけでなく、壁や屋根の壁の内側でも水滴が溜まる結露は起きます。
結露計算をして、壁体内結露のリスクあるかないかを見定めることが重要です。
設計段階で結露計算をしっかり行えば、断熱材+耐力面材+防湿シートのベストの組み合わせが事前に検証できるので、壁の中の結露を防ぐことができます。
 
アーツデザインの結露計算

構造材の結露

 

冬型結露が壁の中で起きると、構造材が腐って家がどんどん弱くなります。
とても怖い状態です。
しかしながら防湿については、作り手側でも認知度がまだ低い現状があるのも事実です。

③防蟻について
ホウ酸による半永久的なシロアリ対策をしています。
ホウ酸?!半永久的?!と気になるワードを並べてしまいましたが、
以前のコラムで詳しく書いているので、ぜひそちらをご覧ください。
 

エコボロン
 

高気密・高断熱や耐震性については認知が広まり、意識が高い方が増えていますが、
耐久性についてはまだまだ知られておらず、置いてきぼりの状態があります。
建物においては重要な要素なので、しっかりコストをかけて耐久性のある家を建てましょう。

■デザインについて
先に挙げた図は、デザインにかける予算が極端に少ないピラミッド図ではありましたが、予算をかけないという意味ではありません。
庭などの中間領域を取り入れたり、居心地のいい場所を作ったり・・という豊かな暮らしを叶えるための本質的なデザインは必要不可欠です。
 

空間デザイン
 

ただ、表面的なデザインに予算をかけすぎては、性能を担保できない家に住むことになってしまいます。
 

ピラミッドの図2
 

これから家づくりを始める方は、ライフサイクルコストと耐久性を重要視したピラミッド型になるように、コストをうまく配分して家づくりを進めて頂けたらと思います。

 

予算配分のピラミッド図

 

■まとめ
予算は限られています。
表面的なデザインに予算を掛け過ぎてしまうと、耐久性や住宅性能に関わる部分に予算を取れなくなってしまいます。
壁の中や床の下、目に見えない隠れてしまう部分にこそ、実は建物における肝の要素が詰まっているのです。
家づくりの予算配分について・・・
詳しいお話はこちらのYouTubeでも話しているのでぜひご覧ください。

 

 

■ 最後に
このコラムでは、家づくりや建築に関する知識や情報を発信しています。
毎日何か所もの現場を飛び回る現役現場監督の代表荒木が、知っておくべき専門的な建築に関するあれこれを綴ります。
建てる前も住んでからも・・みなさんの豊かな暮らしのお手伝いができると嬉しいです。

 

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最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
YouTubeでは、ルームツアーや家づくりのポイントなどをお話しています。
そちらもよかったらご覧ください。

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